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カルノシンとアンセリン

3.カルノシンとアンセリンの吸収と代謝

(1)カルノシンとアンセリンの吸収と動態
 
カルノシンを摂取した場合にどれくらい吸収されるかについて調べられている。経口摂取したカルノシン及びアンセリンのほとんどは、消化管では分解されることなく、小腸から小腸上皮細胞に吸収される1819。吸収された後の状態が観察されている。ヒトにカルノシン摂取させた後5時間にわたって、血中並びに尿中のカルノシン量を観察した。尿中には、5時間で、摂取量のカルノシンの約14%が回収された。血中には、ヒスチジンだけが多く検出されて、カルノシンは検出されなかった。また、血中のカルノシナーゼ活性を阻害した状態でも、カルノシンは全く検出されなかった。これらの結果から、尿中のカルノシンは、摂取されたカルノシンがそのまま移行したとは考えにくい。摂取されたカルノシンの多くは吸収された後、小腸細胞内で分解され、ヒスチジン及びβ-アラニンとして血中や筋肉に移行すると考えるのが妥当である。

(2)カルノシンとアンセリンの合成
 
ラット骨格筋では、まず、β−アラニンとヒスチジンから、L-カルノシンが合成される。カルノシンは、carnosine N-methyl transferaseEC2.1.1.22)によってメチル化されてアンセリンやオフィジンになる(図3)
 
ラットに低タンパク質の食事を与えると、筋肉中のカルノシン含量は、著しく減少するが、アンセリン含量は変化しない。また、ラット腓腹筋の神経を切断した場合も、カルノシン含量は減少するが、アンセリンは変動しないことが明らかとなっている。このときに、カルノシナーゼの活性は、切断しない場合の2倍以上に上昇した10
 
放射性ラベルしたヒスチジンとβ-アラニンを用い、これらの摂取が、ラットの生体内組織へどのように取り込まれるかを調べた20。これらの摂取後、放射活性の筋肉中アンセリンへの取り込みは検出されなかったが、筋肉中カルノシンへの取り込みが促進された。このことから、取り込まれた食事由来のヒスチジンは、まず、カルノシンへ移行すると判明した。この結果から、アンセリンはカルノシンから合成されると推察された。ヒスチジン及びβ-アラニンのカルノシンへの取り込みは、摂取後8時間で一定となったが、β-アラニンをさらに投与すると、約2倍まで上昇した。β−アラニンは、カルノシン合成律速因子となっている可能性が示唆された。この現象は、鶏ヒナでも認められており、β-アラニンの経口投与により筋肉と脳のカルノシン含量が増加すると報告されている21
 カルノシンは、カルノシン合成酵素(別名:β−アラニン、L−ヒスチジンリガーゼ、EC6.3.2.11)によって合成される。この酵素は、ATPMgイオン存在下で、β-アラニンとヒスチジンからカルノシンを合成する。基質としては、β-アラニン以外にγ-アミノ酪酸(GABA)を利用できる。GABAとヒスチジンの結合を触媒し、ホモカルノシンを生成する。分子量は、250,000で、分子量119,000のポリペプチドの2量体を構成している22,23
 
カルノシン合成酵素は、骨格筋に最も多く含まれており、脳や心筋にも存在している。ラットのカルノシン合成酵素の活性は、β-アラニンに類似した構造を有する化合物、アミノプロパンスルホン酸や5-アミノバレル酸によって阻害される。アミノプロパンスルホン酸は、カルノシン合成酵素を競合的に阻害する。一方、5-アミノバレル酸は、本酵素を非競合的に阻害すると報告されている24

(3)カルノシンとアンセリンの分解
 
カルノシンは、カルノシン分解酵素(別名:組織カルノシダーゼ、non-specific cytosolic dipeptidase, EC3.4.13.18)によって、構成アミノ酸であるβ-アラニンとヒスチジンに分解される。カルノシン分解酵素のカルノシンに対する最適pHは、9.5付近である25。この酵素は、1949年にブタ腎臓で発見された。腎臓以外では、肝臓、脾臓でも見いだされており、動物組織に広く存在している。ブタ以外にも、ラット、マウス、ヒトで存在が認められている。その後、血液中にもカルノシン分解酵素の存在が見いだされた2628。性質が異なっていることから、別酵素として報告され、血清カルノシダーゼ(serum carnosidase)と命名された。血清カルノシダーゼは、カルノシンだけでなく、組織カルノシダーゼの作用できないホモカルノシンに作用する。また、分子量は、160,000であり、組織カルノシダーゼ(Mr. 90,000)より大きい。  
 
最近、遺伝子工学的研究により、脳に特異的に存在し、カルノシン並びにホモカルノシンのみに作用する新規ジペプチダーゼの存在が明らかとなった29。ヒトカルノシダーゼ(EC3.4.13.20)と命名された。本酵素の最適pHは、8.5であり、脳のカルノシン量を制御していると考えられる。
 
カルノシンの酵素的分解によって生成されたヒスチジンは、酵素的に脱炭酸作用を受けて、ヒスタミンに変化する(図3)。特に、生理的ストレスが生ずると、肥満細胞からヒスタミンが放出されるが、カルノシンは、肥満細胞のヒスタミン前駆体としてのヒスチジン貯蔵庫として存在しているとの推察もなされている。(Netボタンで次頁にリンクします)

図3.組織におけるカルノシンの代謝経路

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