(2)筋肉における変動とその因子
 筋肉中のカルノシンやアンセリンの含量は、摂取した食事の影響を受ける。His量の異なる飼料を摂取したときに、筋肉中のカルノシンとアンセリン含量にどのような影響を与えるかを調べた11。食事中のHis含量が摂取必要量より多くても少なくても、食事摂取後の筋肉中のアンセリン含量は、変化しなかった。一方、カルノシン含量は、His量の摂取量の影響を受け、Hisの摂取量が少ないと筋肉中のカルノシン含量は低く、多いと高い値を示した。また、ヒスチジンの無い食事をラットに食べさせても、同様に、腓腹筋のカルノシン含量は著しく低下した。この低下は、ヒスチジンを含む食事を与えることで、容易に回復した12。一方、ヒスチジン過剰の食事を与えると、筋肉中アンセリン及びカルノシンの含量は、2倍に上昇したと報告されている1314
 
筋肉中のカルノシンやアンセリンの含量は、年齢による違いがあると報告されている15。ウマでは、若いサラブレッドの筋肉のカルノシン含量は、老齢のものより有意に高い。また、最近、筋肉におけるこれらの含量は、性ステロイドホルモンであるアンドロゲンやエストロゲンにより変動することがわかってきた16。個体による含量の違いは、これらのホルモンの含量の違いによると推察される。

(3)血中における変動
 血中でのカルノシン濃度は、飢餓状態でも日内変動が無いと報告されている17。しかし、激しい運動により筋肉が損傷すると、血中のカルノシン濃度が著しく向上する。また、血中のカルノシン濃度は、年齢と関連があると報告されている。3歳のウマの血中カルノシン濃度は、11.314.1μモル/リットルであるのに対し、1歳あるいはそれ未満のウマのものは、3.98.72μモル/リットルであり、前者は後者より23倍高い。また、動物種によってその含量が異なっている。ヒトの血液では、カルノシン含量は非常に少ないと報告されている。筋肉と血液でのカルノシン含量あるいはその変動に関係があるか否かは、興味深い課題である。
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カルノシンとアンセリン

 2.カルノシンとアンセリンの分布

(1)動物種や組織による分布の違い
 
カルノシンは、骨格筋に多量に含まれているが、脳、心筋、腎臓、胃、嗅球にも含まれている。この組織的分布は、種によって異なっており、ヒトでは骨格筋と脳のみで検出されている。また、ラットでは、骨格筋、脳及び心筋で検出されたと報告されている6)
 
骨格筋には、カルノシンだけでなく、アンセリンも多く含まれている。動物種や筋肉部位によってそれぞれの含量が異なっている(表1)7,8。牛、豚、馬、鹿および鯨の筋肉には、カルノシンが多い。一方、家兎、鶏、鴨などの鳥類や魚類の筋肉には、アンセリンが多い。各種魚類でのアンセリン含量を比較すると、カジキ、カツオ、マグロ、サケ、トビウオなどに多く含まれている9。魚類で、例外的にカルノシンが多い魚種として、ウナギ類がある。
 
また、同じ動物種でも、筋肉部位でその分布は異なっている。豚肉では、ロースのカルノシン含量がモモのものより多く、鶏肉ではムネのカルノシンやアンセリン含量がモモのものより多い。魚類では、血合い筋肉のアンセリン含量は、普通筋の4分の1から10分の1である。
 このような動物種や筋肉部位によるカルノシンやアンセリン含量の違いは、筋肉を構成する筋線維型の量的な違いによると考えられる。アンセリン含量は、筋線維型に違いによる差異があまり認められない。一方、解糖型筋線維である
IIb型には、カルノシンが有意に多く含まれており、このタイプの筋線維の多い筋肉部位ほどカルノシン含量が高いという報告5)もある。しかし、ウサギでは、白色型筋線維中のアンセリン及びカルノシンの含量は、赤色型筋線維に含まれるもののより多く、それぞれ1217及び12μモル/g肉であった10。なぜ、ウサギの分布が、他の哺乳類と異なっているかは、意外である。カルノシンとアンセリンの分布に関しても、不明な点がまだ多く残されている。

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